『腸』というのは体全体の健康の要所であり、ウイルスや細菌などの悪いものを体に入れないようにする最終防衛ラインです。
腸は食物から摂った栄養素を効率よく吸収して、全身に送り届ける働きをしています。
加えて、腸はビタミン類、免疫抗体、ホルモンなど、生きる上で欠かせないものを作り出しています。

さらに、心の安定を保つ上でも、腸の働きが大きく関わっていることが、最新の研究によって分かってきました。


◆腸は第二の脳

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人間の体の他の器官や筋肉は、基本的に脳やせき髄からの命令が運動神経に伝わって動きます。
ところが腸は、脳からの命令なしに自分で決めることもできるし、脳と連絡を取って決めることもできます。
なぜなら、腸には神経細胞がたくさん集まっていて、その数は何と1億個ほどあり、脳に次いで多いのです。
だから、腸は第二の脳と呼ばれています。


◆腸内細菌
腸内細菌は、善玉菌・悪玉菌・日和見菌の3種類に分けられ、全身の健康に大きく関わっています。

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【善玉菌】
善玉菌の代表的な菌にはビフィズス菌・乳酸菌・酪酸菌などが挙げられます。
野菜や果物に含まれる水溶性食物繊維などをエサとして食べて、代謝して短鎖脂肪酸という物質を出します。
短鎖脂肪酸を作る以外にも、ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンなど8種類のビタミンB群と、ビタミンKを作っています。

【悪玉菌】
悪玉菌というのは何が悪いのでしょうか。
ウェルシュ菌やボツリヌス菌は、下痢・嘔吐などの激しい食中毒症状を引き起こす悪玉菌の代表です。
硫化水素やインドールといった、悪臭を放つガスを発生する悪玉菌もいます。
食べる量が多すぎたり、消化が悪い加工がされているタンパク質を接種したりすると、タンパク質が分解されずに大腸まで届いてしまいます。このように大腸までやってきた肉類の残りカスなどのタンパク質は、悪玉菌の大好物です。悪玉菌の増殖により、便やおなら、体臭などが臭くなります。
そのガスが腸から体内に吸収されて皮膚に届くと肌荒れになってしまいます。
悪玉菌は匂いだけでなく、発癌性毒素も産出します。実はその毒素が大腸がんの原因になっているのではないかという事がわかりつつあります。

悪玉菌が元気に活動しないようにするため、善玉菌を増やし、短鎖脂肪酸をたくさん出してもらうよう心がけることが大切です。

 
では、善玉菌を増やすには、どの様にすればよいのでしょうか。
まずは善玉菌であるビフィズス菌・乳酸菌・酪酸菌の大好物である、水溶性食物繊維をたくさん摂取するのが良いでしょう。

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腸活で特に多いのがヨーグルトを食べる事ですが、ヨーグルトの乳酸菌は9割が大腸まで届く前に、胃酸で死んでしまいます。
ヨーグルト以外の発酵食品も、多くは大腸に届く前に死んでしまいますが、水溶性食物繊維は胃酸で消化されることなく大腸まで届く上に、すべての善玉菌のエサになるため、腸活にはイチオシです。

腸内細菌のバランスは1~2ヶ月で変えられる

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一般的に良い状態の便はバナナ状の便と言われています。
その7~8割が水分で、残りの1~2割が最終的に吸収されなかった食べものの残りや食物繊維、腸の内壁がはがれたもので、1割が腸内細菌の死骸で構成されています。

単純に1/3が腸内細菌の死骸だと考えると、腸内にいる細菌数が100兆個で、その重さがおよそ1500gなので、およそ6700億個くらいの腸内細菌が、私たちがトイレで排便するたびに、死んで出て行っているという事になります。

スムーズに入れ替えることができれば、1~2ヶ月で腸内細菌のバランスは整ってきます。

腸内細菌というのは本当に不思議な細菌です。ブドウ球菌のような細菌は、腸内に定着して生きることはできません。消化液で殺されたり、大腸まで届いたものは大急ぎで体外に排出されます(このときに下痢の症状が現れます)。

私たちの体の中で生きられる、限られた種類の菌だけが定着し、食べて出すを行い、最後は死んで出ていくのです。


◆ぜん動運動と腸活

腸のぜん動運動は、入ってきた食べものを分解・消化・吸収し、さらに便を作っていらないものを排出するために欠かせない動きです。

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胃と腸それぞれが筋肉を収縮・弛緩させる動きを繰り返し、中に入っているものを移動させていきます。
便秘に悩む方は、このぜん動運動が弱くなっていることが多いです。
ぜん動運動が活発なら、便が大腸内に居座らずに排出されます。便と一緒に悪玉菌のエサとなるたんぱく質のカスや、悪い脂なども排出されるため、悪玉菌が極端に増殖する心配はありません。食事には気を付けれいるのに腸の調子が悪いという人は、善玉菌を増やすのに加えて、このぜん動運動の促進を意識する必要があります。

腸活=ぜん動運動の促進+食事の改善です。

このぜん動運動を活発に行う事は、免疫においても大事なことです。

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ぜん動運動が活発だと腸壁からムチンが分泌され、ムチンをエサにして善玉菌が増えます。
そして善玉菌が増えると『短鎖脂肪酸』が作られます。
 
 
短鎖脂肪酸の働き】
短鎖脂肪酸は、腸の中から全身への影響までを含めて、良い事ばかりをしてくれている、自前の万能薬のような物質です。

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短鎖脂肪酸とは、腸内細菌が作るプロピオン酸、酢酸、酪酸などを指します。
この短鎖脂肪酸の働きとしては、まず腸管のエネルギー源となり、腸のぜん動運動を活発にして便秘を予防したり、悪玉菌の働きを抑制したり、代謝の促進、食中毒や感染の予防、肥満や糖尿病の予防などの働きに加え、免疫抗体である『IgA抗体』をつくる手助けもしてくれています。

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腸内にある免疫細胞を活性化させ、免疫機能を正常に保つのも短鎖脂肪酸の役割です。
ブドウ糖の代謝を良くする働きを持っている、GLP-1というホルモンの分泌を促すことで、糖尿病の予防につながります。

それ以外にも、最新の研究では、短鎖脂肪酸の産生により悪玉菌が抑えられ、セロトニンなどの「幸せホルモン」が作られ、鬱を予防するなどのメンタルの安定にも寄与することが分かってきました。
 
 
【パントテン酸】
ぜん動運動を食材で改善する方法としては、ビタミンB群の一つであるパントテン酸を含む食物を意識して摂るといいでしょう。

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パントテン酸は、自律神経を刺激してぜん動運動を促進する作用があります。
パントテン酸を多く含む食材としては、レバー、鶏のささみ、たまご、魚全般、カリフラワー、ブロッコリー、干しシイタケ、納豆、牛乳、とうがらし、長いもなどにも多く含まれています。このような食材を積極的に食べることで、腸のぜん動運動を活発にすることができます。
また野菜の繊維質を摂ることでも、局所的に腸を刺激して、ぜん動運動が促進されます。
 
 
【大ぜん動】

大ぜん動とは、大腸の動きによって便を体外に排出させるための動きをいい、通常1日に1〜2回起こり、多くは朝食後に起こります。

通常のぜん動運動とは違い、直腸内に強く便を押し出し、便意を催させる動きで、早さも通常のぜん動運動の200倍ともいわれています。大ぜん動によって直腸に便が移送され、便意が生じた時に排便を我慢してしまうと、次の大ぜん動までの間に大腸内で水分の吸収が進み、便が硬くなってしまうことがあります。

大ぜん動が起こるには大事な条件があります。胃と小腸が空っぽの状態で、胃に食べ物が入ってきた時に初めて胃・結腸反応という反射反応が起き、大ぜん動が起ります。

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私たちは、朝起きてすぐ大腸が活発に運動を始めます。
その後、空っぽの胃に食べ物が入ると、胃は大腸に向けて便を送り出すぜん動運動を開始するよう、シグナルを送ります。
すると、大腸は、大ぜん動運動を開始し、便は急速に直腸へ送られます。
便が直腸に達すると、脳や大腸上部に排泄を促すシグナルが送られ便意を催すようになり、排便されます。

大ぜん動が起こる条件である『胃結腸反射』は、胃と小腸が空っぽの状態で、胃に食べ物が入ってきた時に初めて起こるのです。最後に食べてから8時間以上たたないと胃と小腸が空っぽになりません。そのためには、夕食を早めに食べて空腹の時間を作ることが必要です。

また、朝食を抜いている人は大ぜん動が起こり難くなってしまいます。そういう人は、何か少しでもいいので、朝食べることをお勧めします。


◆便秘の原因と解消方法

腸が良い状態を保つためには、ぜん動運動が適切に行われている事が重要です。このぜん動運動は、自律神経と深く関わっています。

便秘の原因として、野菜の摂取不足や運動不足があることは皆さんよく知っていて自覚症状がある方も多いですが、それよりもまず大腸のぜん動運動が弱いという原因が疑われます。ぜん動運動が弱いという事はつまり、交感神経が優位になっているという事です。

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活動神経である『交感神経』が優位な時は、ぜん動運動は停滞しています。
一方、リラックス神経である『副交感神経』が優位な時は、ぜん動運動が活発になります。
したがって、排便は副交感神経が優位なときに起こりやすく、緊張状態が続き交感神経が優位なままの人は、ぜん動運動が鈍いために便秘になりやすくなります。

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腸の状態を良好に保てば、自律神経にも良い影響を与えられます。
脳と腸は互いに情報を送りあっています。これを脳腸相関と言います。
腸管神経の神経細胞は、自律神経の末端部分のようなものなのです。
自律神経は脳から太い神経が背中にある脊髄を走行し、そこから交感神経と副交感神経は、様々な器官へ分かれて繋がっています。
小腸と大腸にも両方がつながっていて、最終的には腸の中までネットを作り、腸管を包んでいます。

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ストレスを受けると、脳から腸へ伝達して、腸の働きが変化し、便秘や下痢をします。
また、腸内環境が変わることで、セロトニンなどのホルモンの分泌が変わり、それが脳へ伝達し、不安になったりリラックスしたりします。

腸が元気なら脳も元気、腸が不調なら脳も不調になってしまいます。

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睡眠は腸のぜん動運動に大きな影響を与えます。

1日の中で、夕方から夜は副交感神経が優位になる時間です。つまり、睡眠中は基本的に副交感神経が優位な状態で、ぜん動運動がしっかり促されて消化吸収のプロセスがどんどん行われ、翌朝の「出す」に繋がるのが、理想的なサイクルです。

【自律神経を整える4つのコツ】

①朝日を浴びて深呼吸&軽いエクササイズ

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朝日を浴びることで、脳内でセロトニンの分泌がスタートします。
深呼吸をして、息を吐く時間を長めにすると、副交感神経が優位になります。
軽く体を動かすエクササイズを組み合わせればさらに良いです。

②朝食をよく噛んで食べる

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朝食は前夕食から8時間以上経ってから食べると、大ぜん動運動が始まります。
朝食を食べた方が排便しやすくなり、よく噛んで食べることで、自律神経が整います。

③適温での入浴

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37℃~39℃の湯船に10分程度浸かる。
入浴後、体温がゆっくりと下がっていくことで眠りにつきやすくなります。
副交感神経を優位にして、ぜん動運動を活発にします。

④夜10時以降は、強い光を浴びないようにする

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質の良い睡眠は、ぜん動運動に大きく関わります。
ベッドにスマホは持ち込まず、部屋を真っ暗にして寝ることを心掛けましょう。
夜10時以降は、パソコンやスマホをなるべく見ないようにするなどして、副交感神経が優位になる生活スタイルを意識しましょう。

以上の4つのコツを守って、自律神経を整えて、睡眠負債を減らすことが腸活には大切なことなのです。


◆腸活とお漬物

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腸活言われ思い浮かぶものの代表に『発酵食品』があります。

発酵食品とは、乳酸菌や酪酸菌・酵母菌・麹菌などの働きによって、食材の味や栄養価が高められたものです。
発酵するという化学反応の間に、善玉菌のエサになる乳酸菌や酪酸菌などの良い働きをしてくれる菌が増えているため、私たちの腸にも良い食べ物です。
発酵食品に含まれるこうした善玉菌は、残念なことにほとんど調理の過程で加熱されたり、食べた後に胃酸によって、大腸に届く前にほとんど死んでしまいます。しかし、死菌でも善玉菌のエサになることで腸内環境を整えてくれます。
麹菌は生きたまま腸に届きます。

善玉菌の中でも最も重要な役割をする酪酸菌は、多くの発酵食品の中でも唯一ぬか漬けの中にのみ含まれています。

発酵食品には、漬物、納豆、かつお節、味噌、しょうゆ等の日本古来から食べられているものと、海外由来のヨーグルト、チーズ、キムチ、メンマ、ナタデココ等があります。

日本には昔から、漬物をはじめかなりの種類の発酵食品があり、腸内フローラの状態は、日本人と海外の人とでは、菌の種類や割合なども異なると言われています。
これは、普段から食べているものが大いに影響していると考えられ、世界でも有数の長寿国である日本人の腸内フローラは、世界からも注目されています。

2022白菜漬

アキモの白菜漬には、腸活に欠かせない乳酸菌がしっかり存在することが、大学との研究の結果で明らかになっています。

食物繊維も豊富に含まれているため、理想的な腸活食材として、お役立て出来るかもしれません。

ぜひ、腸の健康=カラダの健康の為に、お漬物を日々の食事に取り入れてみてはいかがでしょうか。

浅漬けと発酵の研究については、こちらのページをご覧ください。
◆アキモがつくる野菜の「発酵」
https://www.akimo.co.jp/about/hakko/